公開日:2022/12/28(水)
先日、伊藤 邦雄 教授と語る「人的資本経営におけるオープンバッジへの期待」というシンポジウムにて伊藤先生のお話を聴講する機会をいただきました。またネットラーニングも共催させていただき、講演の機会をいただきました。
その中で、伊藤先生のお話でとても強烈な印象に残った話があります。
伊藤先生が人的資本に注目した一番のきっかけはあるエピソードを聞いたことだという。
あるとき日本の大手企業のトップが海外の企業のトップとの面談で、あなたの会社はいくら人材に投資をされていますか?という質問を受けたとき、日本企業のトップは回答に詰まっていたところ、間髪入れずに海外の企業のトップは研究開発費と同じくらい投資をしている、と答えられたとのこと。
この話を聞いたとき伊藤先生は初めて日本企業と海外企業とでは、経営戦略の中核に人を位置づけているかどうかに関して大きな差があることに気づき、これはまずいぞ……と感じられたと、お話しされていました。
2022年はまさに伊藤先生がこれはまずいぞと感じたことを人材版伊藤レポート2.0でまとめ、多くの企業のトップがそのレポートを読み、経営戦略と人材投資を密に連携させることの重要性を強く認識した年であったと感じています。
そうした中、人的資本経営を実現するために重要視されている「リスキリング・学び直し」については経営戦略と人材戦略においての定量的なギャップの把握から、それに対応したリスキル・学び直しの具体的な対策を実施する必要があります。
すでに実践している企業の事例もあり、そこから学ぶことは多くあります。
最初に紹介するのはDX推進というテーマにおいて実践し成功した、経産省が出している実践事例集(*1)で冒頭に紹介されている旭化成株式会社です。同社は経営戦略の実現に必要な人材ポートフォリオを構築し、DX推進においてはDX人材をレベル分けしてKPIを設定し、目標を達成しました。
同社は全社員を対象としたデジタルプロ人材の育成にも取り組んでおり、スキルを可視化するオープンバッジを使い、旭化成グループ4万人に対して育成プログラムを効果的に展開しています。
次に紹介するのは上述と同じ実践事例集で紹介されている、ロート製薬株式会社の事例です。同社は企業内大学を設立し、キャリア自律に向けた社員の自発的な学びを促進するため、オンラインを活用した学びのプラットフォーム「ロートアカデミー」を設立しています。
現在企業内大学は、ここ数年の急速なオンライン研修の広がりを受けて、多くの企業において企業内大学の役割の見直しから新規設立が広がっています。
従来までは次世代リーダー育成の比重が高かった企業内大学ですが、オンライン化による機会拡大、自律的なキャリア形成が重要視される中で、全社員の能力アップに企業内大学を学びのプラットフォーム(LMS)を使って展開する企業が増えています。
同社においてもロートアカデミーをオンラインで展開し、動画コンテンツやセミナーなどを配信して、学びのきっかけの提供から自らの意思で成長し続ける人財の育成に取り組んでいます。
ダイキン工業 | 2017年 社内大学「ダイキン情報技術大学」でデジタル人材を育成。AI人材の育成を強化。 |
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兼松 | 2019年 兼松ユニバーシティ開学。兼松およびグループ会社に所属する全従業員対象。入社10年目以下の社員は必須(単位)取得・認証。 |
損保ジャパン | 2020年 損保ジャパン大学を開学。全社員(2万4000名)がどこからでも学べるオンライン企業内大学としてアピール。 オープンキャンパスとして一部一般公開。 |
あいおいニッセイ | 2021年 ADユニバーシティ開学。全社員に700種の講座をオンラインで提供。 単位認定、タレマネでスキルを見える化。 |
パーソルHD | 2022年 社員が教え学び合い、共に創り上げる企業内大学「Temp University(テンプユニバーシティ)」開学。 |
こうしたオープンバッジやLMS(学習管理システム)、eラーニング、オンライン研修などを活用した人材育成は、これからの日本企業の人的資本経営、そして情報の開示までに大きな役割を発揮するラーニングテクノロジーであると考えています。
最後に参考までに筆者のオープンバッジを紹介して終わりたいと思います。
学歴ではなく学習歴が重要視される時代、保有するスキルの証明を簡単に可視化し、それを持ち歩くことができる新しいデジタルクレデンシャルです。