公開日:2023/2/8(水)
1950年代、アメリカの主要企業を中心に企業内大学が社内に開学され、GEやマクドナルド社のハンバーガー大学などの成功により、企業内大学は一時期多くの注目を集めました。
日本では2000年以降に大手企業を中心に企業内大学が続々と発足し、ソニーやトヨタ、富士通、損保ジャパン、ニチレイ、資生堂などがその存在を公にしました。現在では日本の大手企業での設置率は15%程度におよぶのではないかと推測します。
なお、近年の急速な研修のオンライン化と学びのプラットフォーム(LMS)の活用によりその役割が大きく変化し、新たに企業内大学をオンラインで開学する企業が増加しています。
一般の研修と企業内大学の役割を比較すると以下の表のようになります。
一般研修 | 企業内大学 | |
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受講スタイル | 割当 | 自主参加・選抜 |
ゴール | 業務直結 | 中・長期的戦略 |
研修内容 | 業務スキル | 専門スキル・キャリアアップ、ビジョンの浸透 |
選抜された社員が中長期的な戦略を中心に学ぶことで、次世代のリーダーを育成する場としていることがこれまでは多かったようです。
また一般的な社員研修とは異なり、経営や専門性の高い研修が多いことから、人事部とは別の組織で運営されることも少なくありません。
従来までは次世代リーダー育成の比重が高かった企業内大学ですが、オンライン化による機会拡大、自律的なキャリア形成が重要視される中でその役割をシフトし、全社員の能力アップに学びのプラットフォーム(LMS)を使って展開する企業が増えています。
全社員を対象とした学びは、個人の趣味の要素も含まれていた自己啓発プログラムの提供から、業務に直結する学びのリスキリングプログラムへとシフトしました。カリキュラムの中心にはデジタルスキルを揃え、学びやすく、自律的な学びを推進するため、学びのプラットフォームとしてLMSが活用されています。
各社それぞれユニークな取組みを展開しており、損保ジャパンではオープンキャンパスとして一部研修内容を一般公開しています。
パーソルHDにおいては社員が教え学び合える場として、社員が企業内大学を共に創り上げるという取組みを行っています。
ダイキン工業 | 2017年 社内大学「ダイキン情報技術大学」でデジタル人材を育成。AI人材の育成を強化。 |
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兼松 | 2019年 兼松ユニバーシティ開学。兼松およびグループ会社に所属する全従業員対象。入社10年目以下の社員は必須(単位)取得・認証。 |
損保ジャパン | 2020年 損保ジャパン大学を開学。全社員(2万4000名)がどこからでも学べるオンライン企業内大学としてアピール。 オープンキャンパスとして一部一般公開。 |
あいおいニッセイ | 2021年 ADユニバーシティ開学。全社員に700種の講座をオンラインで提供。 単位認定、タレマネでスキルを見える化。 |
パーソルHD | 2022年 社員が教え学び合い、共に創り上げる企業内大学「Temp University(テンプユニバーシティ)」開学。 |
学びのプラットフォームを活用したオンラインでの企業内大学では、スターバックスグローバルアカデミーのように社外にもカリキュラムを無料で公開提供し、アリゾナ州立大学と共同で世界に学びを一部無料で公開している例もあります。
このアカデミーでは受講するコースにデジタル証明のオープンバッジが修了証書として発行されており、SNSなどで共有できるようになっています。
今後、企業内大学が講座の多くをオンラインプラットフォームに移行していくことで、さらに多くの社員へリスキル、アップスキルの機会を提供することができるようになります。
そして、さまざまな社員の学習データをもとに、社員のスキル・能力の把握、そして適切な人員配置などの実現をも可能とします。
また外部への企業内大学の存在の公開や詳しいプログラム内容の公開により、企業の人的資本への投資や取組みもアピールすることができ、優秀な社員の採用にも繋がるのではないかと思われます。
最後にわたしがスターバックスグローバルアカデミーで受講したProject Management Basics講座修了のデジタル証明(オープンバッジ)を公開して終わりたいと思います。
ガンジーが残した言葉のように私もいつまでも学び続けたいと思います。
Live as if you were to die tomorrow. Learn as if you were to live forever.
Mahatma Gandhi