加速する人材育成の革新的なソリューション「オープンバッジ」でスキルをコントロールする

公開日:2023/3/1(水)

筆者:岸田努(株式会社ネットラーニング 代表取締役社長)

リスキリング革命と人的資本経営の推進

2020年、世界経済フォーラムにて、第4次産業革命(IoT、AI、ビッグデータを用いた技術革新)によって、さまざまな新しい仕事が生まれると同時に7,500万人の雇用が奪われる可能性があると発表されました。

こうした変化に対応するために、Reskilling Revolution Platformというプロジェクトを開始し、2030年までに全世界で10億人をリスキリングするという宣言を行いました。主にデジタルスキルを中心としたリスキルとアップスキルがテーマとなっています。また、日本でも2022年10月に岸田首相が、今後5年間で1兆円をリスキリング支援に投じる方針を打ち出しました。

そうした中、経済産業省の人材版伊藤レポート2.0は、日本的経営にパラダイムシフトを迫る問題提起をしました。人材は「管理」の対象ではなく、その価値が伸び縮みする「資本」であることを指摘し、人的資本経営を進める具体的な羅針盤を示しました。

人的資本経営を実現するには「経営戦略と連動した人材戦略をどう実践するか」が重要であり、企業にとって必要な人材を見つけて、未来の仕事に対し、リスキル・学び直しが不可欠であると説明しています。

スキル・成果・学習を評価し、目に見える形にする重要性

これまでも自分がもつスキル、仕事の成果や実務経験、学習を評価し、認められることは、常に強いコミットメントの原動力となってきました。
こうした評価や目に見える形での表彰などは自信を高め、さらには自らが学びスキルを身につけていこうとする自律的な学びに繋げるための非常に強力な動機づけでした。

こうしたスキル・成果・学習歴の可視化をデジタルにデジタル技術で実現したのがオープンバッジです。

オープンバッジとは何か?

オープンバッジは国際技術標準規格にそって発行しているデジタル証明/認証で、スキル・成果・学習の可視化を実現します。
オープンバッジは広くインターネットを介して公開することが可能です。メールの署名に貼り付けたり、タレントマネジメントシステムへ登録したり、SNSなどで共有したりすることができます。

それらの公開されたオープンバッジを通して、取得した内容を証明することができます。
そしてブロックチェーン型のオープンバッジは、偽造・改ざんが困難であるため信頼のおける学習・資格証明書として、企業の採用やスキルマップ、さらにはスキルマッチングなどでの活用がなされ、個人が身につけたスキルや知識へ新たな価値をもたらしています。

社内でのオープンバッジの活用

社内で展開されるさまざまな業務研修、デジタル人材育成、リスキリング、そして最近あらたに息を吹き返し利用が進む企業内に設置される学びの場「オンライン企業内大学」などに、オープンバッジをベースとしたデジタル認証・認定を付加、実装することで、社員のスキルの可視化を実現し、社員にも学びに新しい価値をもたらすことができます。

オープンバッジは次のことを可能にします。

  • 社員のスキル、能力、経歴を定量的に把握
  • 社員の強みと弱みを可視化し、必要なスキルやトレーニングをマッピングする
  • 業務に必要なスキルを可視化し人材配置を向上、また将来のキャリアパスを示す
  • 獲得したスキルの共有による波及効果と学びの文化醸成
  • 学習意欲の向上・モチベーションアップ
  • エンゲージメントの向上
  • SNSなどの共有によるマーケティング・広報活動、採用などでの活用

活用事例(IBM、旭化成)

IBM

引用:IBM発表資料新しいウィンドウで開く

IBMではグローバルな人材の採用・育成・定着を目的にオープンバッジを活用しています。
同社では社員のコミットメント、エンゲージメント、そして能力開発を行うためには、正しく社員を評価することが重要な要素であると考えました。
こうした課題にたいしてオープンバッジを採用し、さまざまな講座と認定コースで4種類(2016年時点では5種類)のバッジを発行し、わずか半年で大きな成果を出しました。

発行されたオープンバッジ
Explorer badges Knowledge(知識) 特定分野における知識とスキルの初期段階の成果を表す
Advocate badges Skill(スキル) 特定分野における高いスキルレベルの学習者としての成果を表す
Inventor badges Capabilities(能力) 複雑なテクノロジーソリューションやアプリケーションを設計、実装する能力の証明を表す
Certified badges Authority(権威) 認定された分野について非常に高いレベルの理解を示していることを表す
Excellence Eminence(卓越) 高度で複雑な課題への深い理解を持つ
数値で見るオープンバッジの効果

また日本IBMでは、2022年度から採用における大卒要件を撤廃し、スキルを重視した採用を強化しています。
各事業部・職種で必要とされるスキルや人材像を明示し、より広い候補からマッチする人材の採用に取り組んでいます。

旭化成

旭化成では全社員向けのDX教育の強化を行っており、2021年6月からオープンバッジを活用しています。
スキルを可視化することで、自律的・自発的な学習を促し、eラーニングを活用したデジタル技術習得を推進しています。
全社員が5段階のうちレベル3以上の取得を目指しており、獲得したバッジをメールの署名やSNSなど、社外への証明として活用しています。

プログラム開始からわずか1年でその成果をあらわし、レベル1は約25,000名、レベル2は約19,000名、レベル3は約15,000名の社員が必須カリキュラムを修了し、オープンバッジを獲得しました。
なお、各レベルのカリキュラムについては2022年12月に発表されたDX戦略資料の20ページ目新しいウィンドウで開くに詳しく発表されていますのでぜひ参考にしてください。

まとめ

「学歴」から「学習歴」が重視される時代に変化し、雇用形態がメンバーシップ型からジョブ型に大きく変わっていく中で「学習歴」をわかりやすく明示・可視化する必要性が生まれました。
そうした中、スキルを可視化したオープンバッジは画像ファイルのため非常に扱いやすく、また誰もが自身の強みをアピールでき、共有できるようになりました。
そして共有されたバッジの波及効果は高く、多くの人の目に止まり、また学習への動機づけを促します。

オープンバッジは、企業の社員のリスキリング・学び直し、そしてDXを推進するデジタル人材育成など、さまざまな場面で活用が可能な革新的ソリューションです。
そして今後さまざまな新しい職種やスキル、キャリアパスが登場していくことが予想される中、個人のスキルを「可視化」することの重要性は、今後さらに増していくことでしょう。
そしてオープンバッジは、国際的な技術標準で発行されているため、グローバルでスキルの証明が可能なソリューションです。
オープンバッジを発行する企業、そして受領する社員、双方にとって大きな価値をもたらすオープンバッジの利用は多くの企業で始まっています。

最後に参考までに私が保有するオープンバッジをご案内します。
学歴ではなく学習歴が重要視される時代、保有するスキルの証明をこのように簡単に共有、公開することができます。

オープンバッジの詳細については下記問い合わせ、もしくは定期開催している当社セミナーにぜひご参加ください。最後までお読みいただきありがとうございました。

筆者プロフィール

岸田 努

株式会社ネットラーニング 代表取締役社長

外資系情報サービス業で大手企業中心に情報システムを導入。2003年ネットラーニングへ入社。eラーニング導入初期の2000年代においてeラーニング市場作りと開拓を行い、大手企業を中心にコンサルティングに携わり数々の研修を成功に導いた。2021年に代表取締役社長就任。外部団体への参画も精力的に行い、一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会、特定非営利活動法人デジタルラーニング・コンソーシアム、一般財団法人オープンバッジネットワークの理事も務める。

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