キヤノン(株)は2000年9月から、社員のIT スキルの向上を狙いeラーニングを本格的に導入した。 ネットラーニング(本社・東京都新宿区)のeラーニングサービス「ネットラーニング」で提供されるIT関連の学習コースをASPサービスで活用し、ことし9月までにのべ666人の社員が受講。1コース(平均15〜30時間)を2〜3ヶ月内に修了することを義務つけているが、現在まで脱落者は1人もいない。 通常、郵送による通信教育などの自学習システムは、修了率が低いというのが当たり前になっている。しかし、「ネットラーニング」では"チュータ"と呼ばれる学習指導員が、テスト添削や質問への回答など個別に受講者の支援を行ない、コースの平均修了率は8割を超える高い水準になっている。さらにキヤノンでは、それをより高めるために事前に脱落しそうな受講者に声をかけるなどのきめ細やかな対応を取ってきた。それが功を奏した格好だ。 「チュータに対する質問など、やり取りが活発な受講者のほうが満足度も習熟度も高い。eラーニングの有効活用ではチュータがカギを握る」と、同社人事本部の袴田勲部長は語る。 キヤノンではすでに97年から光学関係の社内研修テキストを電子化し、イントラネット上で提供してきた。だが、IT系スキルの向上のためには、社内でコンテンツをつくる余裕も社内講師も足らない。そこで、ネットラーニングにアウトソーシングした。 導入にあたってのコストは基本的にASPサービスなのでコースの受講料のみ。なお、ネットラーニングの「情報技術シリーズ」学習コースの標準価格設定は1コースで3万8000円(他のコース料金は下記ホームページ参照)。 eラーニング導入後、管理職層の受講者が増えるなど思わぬ結果があったのを受けて、ことし4月からはITスキルだけでなく、他のeラーニングベンダーが提供するビジネススキルや語学などのコースも幅広く利用し、キヤノン・グループ全体に広げようとしている。 「コンテンツの質と量がもっと向上するとともに、料金が下がってほしい」という袴田部長の願いはユーザー共通のものだろう。もしそうなれば、社員教育にASPサービスが利用されるケースがもっと増えてくるに違いない。