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人材教育 2002年2月号
新人事制度導入でのeラーニング活用事例(P95~97)

eラーニングの活用分野が、急速に拡大している。なかでも、大規模な会社の人事制度や評価制度の転換にあたって、新しい考え方を定着させる手段として注目され、導入を検討している企業が多い。株式会社ネットラーニングは、この分野で多くの実績をもっており、ここでは、管理者側の評価者研修が実施された三洋電機と、評価される側の一般社員の研修がおこなわれたキヤノンの例を、具体的にみてみよう。

■成果主義導入にあたり
  評価制度の定着をはかるための
  評価者研修をeラーニングで実施

1.三洋電機

三洋電機では2000年4月に役職者に対して年俸制が導入され、2000年10月には一般職にも成果重視の処遇制度が導入された。

成果重視の処遇制度を導入する上で重要となるのが、評価の納得性、公平性である。そのためには①評価する役職者が制度の正しい理解をする、②アセスメントと継続的学習の仕組みを構築する、③役職者の意識改革が必要であった。

こうした背景の中、評価者研修を行うことになったが、三洋電機では約3000人の組織運営の役職者が国内外300以上の事業所に分散しており、新しい制度を短期間に徹底させるには、集合研修だけでは困難であった。そこで2000年10月の成果主義導入時に各事業所でまず集合研修を実施し、それをフォローする目的で株式会社ネットラーニングの協力をえて、eラーニングを導入した。2001年4月に社員の査定と評価が行われることになっていたため、この評価者研修はその前の2001年1月から3月にかけて実施された。

内容は、全6章で構成され、評価制度のポイントが説明される。各章の最後には確認テストがあり、答案を送るとすぐに解答と解説がもどる。満点をとらないと次の章に進めないようになっており、アクセスするたびにテストの内容もかわるため、本当に理解しないと修了できない仕組みになっている。このeラーニングの導入効果について、導入にあたった三洋HRS株式会社 経営研修部 シニアプランナーの加納 啓子氏は次のように評価している。

「いそがしい役職者にとって、いつでもどこでもできるeラーニングのメリットは大きく、自宅で受講していた人も多かったようです。掲示板機能を使った質問などで、社内で新しい制度についての認識を共有化することもできました。コスト面でも、集合研修の4分の1で済ませることができました。」

実際、受講修了者からのアンケートを見ても、96.9%の人が「大変役に立った」もしくは「役に立った」と回答しており、受講者の観点でも非常に有効であったことがわかる。「従来型の集合研修ではできなかった、人事担当による進捗管理とアセスメントが可能になっていることも、eラーニングを導入した効果でした。」(加納氏)

こうした成果をふまえ、三洋電機では2001年の4月以降も新任の役職者に同じコースを受講させている。また、一般社員の研修ツールとしても、英語や情報技術分野などで株式会社ネットラーニングの学習コースを導入した。さらに、2002年1月には2002年4月入社予定の内定者研修コースを導入する予定である。

「これからは社員自らが自分を磨かなければいけない時代です。それを実現させるためには、従来型の研修を提供していただけでは社員の意識も変わりません。eラーニングは自発的学習に適した方法ですし、このような新しいツールを提供することで、社員の意識も変わる契機になると考えています。また、学習履歴が残るため、そのデータを人事データにリンクさせていくなど、評価制度の中で位置付けやすい研修方法だといえるでしょう。」(加納氏)

■すべての社員に対して効率的に
新人事制度の周知を図るために
eラーニングを活用

2.キヤノン

キヤノンでは2001年4月に管理職を対象に新人事・賃金制度を導入した。それまで30年以上続けていた職能資格制度から、より実力主義的な役割等級制度に改めたのである。そして労使による「賃金制度改革委員会」で議論を重ね、2001年9月には対象を一般社員にも拡大することで労使合意が成立。それを受けて、さまざまな形で新制度の周知・徹底を図ることとなった。管理職には、1泊2日の集合研修を行うこととした。部長クラスについては新制度の考え方や仕組みを説明だけで事足りるが、一般社員を評価する立場の課長クラスについては、ケーススタディなどの実習を含めた評価者訓練を行わなければならない。まず、国内外の各拠点および関連会社から人事担当者約150名を集めてトレーナー養成研修を実施。そして2001年10月から、トレーナーがそれぞれの持ち場で順次研修を行っていった。

ところが、一般社員に対する教育をどうするかという点で壁に突き当たってしまった。2002年1月下旬から新制度に基づく目標設定が始まるので時間は限られている。また、特に本社には4000人もの一般社員がおり、説明会の会場確保もままならない。ただでさえクリスマス商戦で多忙を極める中、1万人近い管理職に対する研修を行うのと並行して一般社員の研修を行うのは、時間的にも物理的にも無理がある。そこで、人事本部・人材開発センター副所長の荻原博氏は、本誌01年3月号に掲載された、三洋電機が評価者訓練にeラーニングを採用したという記事に着目した。

「三洋電機様にお願いして実際に見せていただいたところ、非常に素晴らしいものでした。特に確認テストは、答案を送ると即座に解答が送られてくること、間違えたところは解説が付いてくること、さらに、全問正解しないと次のステップに進めないことなど、きちんと理解していないと修了できない仕組みになっており、これなら行ける! と感じました。早速、社内で諮った上で、一般社員向けにはeラーニングを活用することにしたのです」(荻原氏)

もともと労使交渉を重ねる中で、労働組合の教宣活動や職場集会などを通じて新制度に対する基本的な理解は浸透していた。また、新制度を詳細に解説した小冊子も配付している。しかし、評価というデリケートな問題がかかわるだけに、周知・徹底は不可欠である。そのための方策の1つとして、eラーニングは絶好のものだったのである。ちなみに、セキュリティの問題もあったが、職場でも自宅でも、また海外からも関連会社からもアクセスできるように、イントラではなくインターネット方式にし、株式会社ネットラーニングの協力で実施したという。

「利用者にアンケートをとったところ、『役にたった』『たいへん役にたった』と答えた者が9割となっており、おおむね好評のようです。中には『画像やイラストによる解説を増やしてほしい』といった要望もありますが、制度の改定に合わせてコンテンツを変えるときに検討しようと考えています。ただ、あくまで社内の制度に関するものですから、システムが安定していて大量のアクセスがあってもダウンしなかった点、期間にも予算にも制約がある中でスピーディに、かつリーズナブルな価格で構築していただいた点などで、とても助かりました(笑)。また、これをきっかけにして他の領域、特に人材育成の領域でもeラーニングを積極的に活用していこうというモチベーションが高まったことも、導入効果の1つだと思います」(荻原氏)

* * * *
キヤノンや三洋電機は、人事制度のみならず、戦略的に、多様に全社的なeラーニングの導入をすすめている。両社のような強い企業文化をもち、教育研修に力をいれてきた企業の先進的な事例は、急速な普及期にはいったeラーニングの今後の活用の方向をしめしていると言えそうだ。
株式会社ネットラーニングは、488社(2001年12月10日現在)のeラーニング導入実績をもち、こうした戦略的なeラーニングの導入企業に対して総合的なソリューションを提供している。