NetLearning in News ~掲載記事一覧~

財界 2003年3月11日号
トップは挑戦する -ネットラーニング社長 岸田徹-
教育効果が大きくコスト削減できるeラーニング
「競争力回復のカギは、社員の研修いかんによります」 (P95)

”いつでも、どこでも”のユビキタスな時代。ビジネスマンや学生、生徒が自分の好きな時間・場所で研修や学習ができるeラーニング。インターネットを使った研修最大手のこれからの戦略は。

「人」の可能性を引き出す

ネット社会を実りあるものにできるかどうかは、やはり、『人』が決める。IT時代の主役は人であり、人の持つ可能性がネット社会を引っ張っていく。

この人の場合、セコムの創業者、飯田亮氏(現最高顧問)との出会いがネットワーク事業で生きるきっかけとなった。

書籍編集の仕事をしているときに、新聞の求人広告欄で見たコピーに目を奪われた。『新事業の責任者求む』―。ネット時代がようやく始まろうとする黎明期で、セコムに躍動感を感じていた本人は早速、面接試験に出かけていった。飯田氏の面接を受けて一年後にセコムに入社。新事業開発室長となり、新しい事業の立ち上げに動いた。

いま、好きな言葉は何か?と聞かれるたびに、『考え尽くす』を挙げる。これも、飯田氏から、しょっちゅう、「考え尽きたと思っても、さらに考えよ」と言われ続けてきた体験もあってのこと。「走りながら考える」ことと「よく考える」ことが、社会に受け入れられる事業作りにつながると語る。

コスト削減は、今の時代の一大テーマの一つだが、社内の研修にかけるコストも経営者にとって最大関心事である。そこでインターネットを利用しての企業内教育、研修業務がクローズアップされてきた。

多額の建設費をかけて研修センターを作り、そこへ一定期間、一定の社員の集めて研修・教育をやる―というのではいかにも費用がかかる。それより、ネット研修ならば、受講者が自分の仕事が一段落した時間に、好きな場所でやれるほうが、仕事の邪魔にもならないし、費用もぐんと安くすむ。しかも、教育効果という面でも、個別指導のeラーニングに注目が集まっている。「日本の企業の競争力の回復のカギは、社員の研修いかんによると思います」とeラーニングによる企業再生を説く。

同社の株主には、キヤノン、NTTラーニングシステムズ、横河電機、大塚商会、インターネット総合研究所、三洋HRS(三洋電機グループ)、資生堂インベストメントファンドなど一流企業が名前を連ねている。

顧客はキヤノン、マイクロソフト、三洋電機、NTTグループ、野村證券、三菱商事グループなど八百数十社にのぼる。

受講者数も約21万5000人にのぼる。サービス開始が2000年4月だから、人気のほどがわかる。「うちは、研修ソフトも自社開発で進めています。他社と違って、担任制のチューター(教師)を取り入れ、一対一の個別指導ができるのが特徴です」と本人も語る。

デフレという経済環境を乗り切るためにもと、産業界では情報武装の努力が続く。

米国と比べて、日本のeラーニング市場規模はまだまだ小さい。それだけに、この業界の競争もこれから本番を迎える。

「受講者の方々から、研修を受けてよかったという反応が返ってきたときは本当にうれしい。仕事で忙しい管理職の方々から、出張中に研修のプログラムをこなしてきましたよと言われたりするときは、手応えを感じますよ」と笑顔を浮かべる。

会長には村井勝氏(元コンパックコンピュータ社長)、副社長に旧三菱銀行(現東京三菱銀行取締役)の大西浩志氏、特別顧問に水野誠一氏(元参議院議員)や根本芳雄氏(元警察庁局長)と役員陣にも各界で活躍してきた人たちが顔を並べる。それだけ周囲の期待が高い若い企業だ。