NetLearning in News ~掲載記事一覧~

日本工業新聞  2002年(平成14年)10月8日 7面

に賭けるトップランナー【33】
ネットラーニング社長 岸田徹氏 =上=


ネット研修で受講生14万人

セコムに入社
社内研修にeラーニングを導入する企業が増えている。ネットラーニングはインターネットを用いた企業内教育、研修業務を手がけるベンチャー企業。独自の教育プログラムでIT技術者の育成をサポートしている。

岸田徹社長(60)は1973年、東大大学院博士課程を修了。大学紛争を経験した団塊の世代だが、「そのまま就職する気にもなれず」書籍編集会社を設立。コンピューター のネットワークには早くから関心を持っていた。

「ネットワークが根本から社会を変えるんじゃないかと思っていた。相当早い時期、80年代後半からネットビジネスをやりたいと強く感じていた」と語る。

91年、セコムの「新事業の責任者求む」という求人広告を見つけ、大企業がどうやって人を採用するのか見てみたいという好奇心もあり、応募。当時、編集会社の役員だったが、当時の飯田亮社長に「いつもまでも待つ」と言われ、1年後に編集の仕事をやめて入社。「新規事業」ではなく「新事業」の開発責任者になった。

「最初、飯田さんに何をやりたいのかと聞かれたときに、ネットを通してさまざまなサービスを提供するようなものを作りたいと申し上げた。インターネットは予想できませんでしたが、フルサービスが提供されるようなネットワークがいくつか日本にできるだろうなとは思っていた」

新事業開発室長としてセコムラインズという小中高向けのネット教育を手がけた。飯田が社長を退いたのを機に、岸田も退職。どこかの離島にでも行って遊んで暮らすつもりだったが、ネット時代が到来して起業家の虫が騒ぎ出した。


大手と契約続々
98年に再度起業。ネットビジネスの進展とともに、エンジニアが不足していいることに着目。「資格を取ることより、最新の技術を身につけることを目指す」高度な情報処理技術者の通信教育プログラムを開発した。

2000年4月からサービス提供を開始した。当初8コースでスタートし、現在120コースを用意。受講生の学習状況を見ながら、チュータと呼ぶ指導員が個別に指導する。受講生の終了率は90%と極めて高い。

「教育研修は人が行うもので、結果に責任を持つのがサービスを提供する側にとって一番大切なことだ。販売したらそれで終わりというわけにはいかない。eラーニングは継続して学習できる。終了した後でも1年間はチェックして、疑問点があれば半年間はチュータに質問もできる」

eラーニングにおけるコンテンツ(情報の内容)は学習の素材であり、チュータの指導が不可欠という考え方だ。1つのコースが20時間から30時間。平均45日間で終了している。企業のニーズに合わせた個別のプログラムも受注している。

個人でも受講できるが、企業との契約がほとんどで、個人ユーザーは数%。NTT、キヤノンなどの多くのクライアントを獲得。社員を一ヵ所に集める必要がなく、受講者が職場で、勤務時間中に自分の席でそれぞれの事情に合わせて学習できる点が受け、スタートしてから2年数ヶ月でユーザー企業は684社、受講生14万人と驚異的な伸び率を示している。

=敬称略(ジャーナリスト 大宮和信)