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産経新聞  2013年(平成25年)6月21日 22面

多様な人材活用で企業に力  ~変わる働き方 生涯現役時代~
 多様な人材の活用は、少子高齢化による労働人口の減少のためだけではない。さまざまな働き方や価値観の人がいることで、組織としての能力向上が期待できる「ダイバーシティマネジメント」に取り組む企業も増えている。

 人材育成事業のネットラーニンググループ(東京都新宿区)の岸田徹代表(71)は「性別や国籍を問わず、実力のある人材が最大限の力を発揮できる環境を提供することで組織の求心力を高めている」。

流動性と柔軟性
 同社は、時間単位の有給休暇や在宅勤務など個人の事情に合わせた制度を充実。個人の能力を生かすために他部門への異動が可能で、上司を経由せずに希望を出すこともできる。

 起業家精神が強く、退職して独立する社員もいることから積極的な中途採用を行い、常に人材を確保。その結果、流動性と柔軟性のある人事サイクルが実現した。

 従業員約100人だが女性管理職は43%に上り、グループ会社5社のうち2社の総責任者は女性だ。外国人も積極登用し、中国や韓国など5カ国の社員が在籍。60歳以上の再雇用社員は同じ業務の場合、定年前と同様の賃金を支払う。

競争力の基盤
 管理職で妊娠・出産を経験する人も少なくない。eラーニングソリューション部の高橋美穂課長(39)は入社後、2人の男児を出産。長男妊娠時も管理職だったが、フォロー体制があったため、問題はなかった。高橋課長は「会社がバックアップしてくれる風土が根付いているので、不安はなかった」。

 別の女性社員(48)は末期がんの夫の介護を経験。夫の入院中は面会時間に間に合うように勤務時間を1時間前倒しした。検査や医師からの説明を受けるときには時間単位の有給休暇を利用し、同席。在宅勤務制度で、入院中の夫の個室で仕事をしたこともあった。

 性別や結婚の有無を問わず、ワークライフバランスを重視しているのも特徴だ。月間の残業時間はほぼ10時間以下。午後5時に帰宅できる日もある。岸田代表は「個人の多様性を尊重することで、個性的な人材が集まる。ダイバーシティマネジメントは競争力の基盤になる」と話している。

能力生かすマネジメント必要
 早稲田大学の谷口真美教授の話「企業にはダイバーシティマネジメントが求められている。市場が多様化する中、多様な人材がいてこそマーケットをつかめるし、イノベーションにもつながる。ダイバーシティマネジメントは、CSR(企業の社会的責任)や同情でやるものではない。ただ会社に残すのが目的ではない。働き方が多様な人がいるだけではなく、能力を生かすマネジメントが必要だ」

「働き盛り」 は人によって違う
 子育てや介護、高齢、障害や病気になっても、生き生きと働き続けられる社会がいい。そんな思いから連載を始めた。
 新卒一括採用で教育する日本企業では、身体的、時間的、地域的な制約のない社員だけが戦力で、病気や転勤拒否、休業・時短社員は競争からの脱落者と見なされがちだ。
しかし、働き盛りは人によって違う。65歳の起業家は65歳から、子供のいる女性は子供の成長後が「働き盛り」だ。

 今後、働く期間は今より長くなる。育児や介護、病気、障害で働けないのは、長い就労人生のほんの一時期だ。
たとえ制約があっても制約があるなりの働き方がある。助け合いながらチーム力を発揮し、働く喜びを分かち合える職場が増えることに期待したい。