NetLearning Press Room~過去の新着情報~

日刊工業新聞  2013年(平成25年)2月25日 27面

「書窓」欄にネットラーニング代表の岸田徹のインタビュー記事
政策の意味が見えてくる 『経済言論』 景気循環の必然性理解

幼い頃から本に親しんできた。若い頃は同時に50冊ほどの本を並行して読んでいたこともあった。当時に比べるとペースは落ちたが、読書は今でも日課だ。時にはノートを取りながら、時には歩きながらも読んでいる。
 中でも印象深いのは、大学生時代に読んだカール・マルクスの『資本論』。経済学を本格的に学ぶためには、原理そのものを理解しなければならないと思い読み始めた。とはいえ非常に難解で、夏休みの1ヵ月間を使ってなんとか読み終えた。経済は単純な法則に従って動いているわけではない。まるで生き物のように、有機的に動くものだ。そうした経済の総合的な仕組みを理解する上で、この本は非常に役に立った。
 宇野弘蔵の『経済原論』も、同様に経済への理解を深めてくれた一冊。当時私が在籍していた東京大学経済学部では、宇野先生のお弟子さんが多く教授を務めていた。そういう意味では私は宇野先生の弟子の弟子、と言える。経済の原理が分かると、国の政策の意味や流れが見えてくる。多くの人は不況を異常に恐れ、政策で避けようとする。しかし優れた企業は不況の過程でさらに飛躍する。イノベーションは不況の中で起きるものだ。その後誰でももうかる時代が来て、また不況で整理される。景気循環は資本主義の必然だと私は思う。
 宇宙論や量子力学など、理科系の本もよく読んだ。歴史書も好きで、古事記や日本書紀は繰り返し原文で読んでいる。宗教関連の本も多い。特に曹洞宗を開いた道元の考え方には影響を受けた。ひたすら座禅を組むのが曹洞宗のやり方。今この一瞬をどう生きるか、ということをとても考えさせられる。
 旅行の中で読書のヒントを得ることも多い。例えば私は島が好きで、100ヵ所くらいの島を旅してきた。島の文化は非常に独特で面白い。沖縄の海人など、島で生きたたくましい海洋民族にも興味をひかれ、ずいぶん本を読んだ。島に関する本で手に入るものは、全て買っているはずだ。
 人類の知的資産は、現状では本のみと言える。そこから何かを学ぶために読書をしている。保有する本の量はすさまじく、かつては3LDKが全て本で埋まっていた。収集欲も、私の読書の動機の一つと言えるかもしれない。

あふれる好奇心

 岸田会長はeラーニングの最大手ネットラーニングの創業者。インターネットを活用した新しい学習のあり方を提案する。学習に関する社業を選んだ背景には、大量の本を読みこなす勉強好きなパーソナリティーが関連しているように思える。分野を問わない造詣の深さにはただ驚かされるばかり。そうして吸収した知識こそが経営判断の元となっているのだろう。「今は英語。1日12時間の猛勉強中」という岸田会長。知的好奇心はとどまるところを知らない。