NetLearning in News ~掲載記事一覧~

夕刊 フジ 2004年(平成16年)7月24日発行
一攫千金! IT助っ人が行く 岸田 徹(62)

インターネットを使った企業内研修、遠隔教育などの事業を展開するベンチャー企業、ネットラーニングの岸田徹社長は根っからの起業家だ。東大を卒業後、書籍の編集会社を設立。セコムの飯田亮社長(当時)に見込まれ、1992年に会社をたたんで入社、新事業開発室長に就任した。小中学生向けのネット教育を手がけたが、飯田が社長を退いたのを機に、岸田も退社。
  「米国のeラーニング市場は1兆5000億円。日本はeラーニングビジネスが少なすぎる。米国に相当遅れをとっている」と98年に再度起業した。ネットビジネスの拡大でIT(情報技術)エンジニアが不足していることも頭の中にあった。「同じ時間、同じ場所に社員を何十人も集めて一斉に授業を実施するのは大変です。コストもかかる。これからはeラーニングの専門の助っ人が必要になる」
  岸田の狙いは的中。受講者が職場で自分のスケジュールに合わせて学習できるだけではく、受講生の学習状況を見ながら、担任制チュータと呼ばれる指導員が個別教育をするのがネットラーニングのウリ。スタートしてから4年でユーザー企業は1123社、累計学習者数は50万人を突破。当初8コースでスタートし、現在420コースに膨れ上がっている。
  サービス開始は2000年4月。開発や準備に費やした2年間はまったく収入が無かった。「友人の会社の一角に机を置いて仕事したり、日々の支出は本当に最低のコストでやっていたので、つらいとか苦しいということはなかった」と岸田。サービス開始4年でこれだけ急速に拡大した理由について、岸田は「専門の会社に任せたほうが内容も適切だし、コストダウンにもなる。受講者がどのぐらい理解したのか掌握できるし、学習の記録も残せる。私たちは教育サービス業。実際に教育を実施して結果が出るまでサポートしている。こういう考えを持ったeラーニングの企業はないと思う」と語る。
  パソコンユーザー、エンジニアも含めてIT技術者教育費は年間1500億円。早い段階でこのうちの半分700~800億円ぐらいがeラーニングに取って代わるだろうと予測されている。岸田の目標は「eラーニングのトップ企業」だ。島好きが高じて、昨年八丈島に12坪のマイホームを建てた。「週末は島へ帰ります。住民票は向こうだし女房も向こうにいる。自然が強烈だし、海で泳いだり魚を取ったり、畑で野菜を作ったり。お金もあまり必要ない。まさにシンプルライフです」と笑う。島への永住計画は? 岸田は「eラーニングの普及は山登りで言えばまだ1合目。のんびり暮らすわけにはまいりません」とかわした。(大宮知信)