NetLearning in News ~掲載記事一覧~

日経産業新聞 2006年(平成18年)12月22日 26面

トップが語る勘所
ネットラーニング社長 岸田 徹氏

週末の島、気分切り替え
オフの充実 仕事にも効用

 企業間競争の激化を受けて、経営トップは仕事への集中力をいかに高めるかが課題となっている。だからこそ休日にリフレッシュすることが今まで以上に重要になっているのではないだろうか。eラーニング(遠隔教育)大手、ネットラーニング(東京・新宿)の岸田徹社長(64)は毎週末、東京・八丈島で過ごす。亜熱帯の別世界で過ごすオフの仕事への効用を聞いた。
――3年前から週末は八丈島で過ごしている。
「八丈島に住み、平日は東京の都心に出稼ぎに来ているというのが自分の感覚だ。島にあるのは別荘ではなく自宅。住民票も移した。日曜日の夕方の飛行機で東京に出てきて、土曜日の朝の飛行機で島に帰る生活だ。妻は島の生活を気に入って、ずっと島で暮らし続けている」
――仕事は島に持ち込まないのか。
「持ち込むことは全くない。島にいる時は仕事のことを完全に忘れる。羽田空港から八丈島まで飛行機に40分間乗っているうちに頭の切り替えができる。島は真冬の今もハイビスカスの花が咲く亜熱帯。環境が全く違うことも切り替えができる理由だろう」
――仕事への効用は。
「島でリフレッシュすることで、仕事への集中力が格段に高まることだ。島では農作業や山歩きなど、思い切りやりたいことをして過ごすので、平日に仕事漬けでも苦にならない。東京に向かう機中から頭の中は仕事のことでいっぱいになる。場所が変わるからこそ、気持ちの切り替えもしやすい」
――教育産業ならではの効用もあるのか。
「人と向き合うすべての仕事で感性が重要だと思う。教育でも人に分かりやすく教えたり、楽しく勉強してもらったりするうえで欠かせない要素だ。豊かだが厳しい島の自然や人々との交流は感性を豊かにするのに役立っている」
「都会にいては、生まれない視点を養えるのも重要だ。例えば日本の人口減少問題。住民の回帰が起きている東京など大都会では、いま一つ実感できないが、島など地方に行くと人口減が加速度的に進んでいることがよく分かる。地球的な環境破壊の進行も肌で感じる。複数の視点を持つことで、経済や社会の全体像が見えてくる」
――往復の航空代金などの費用負担は重いのではないか。
「航空代金は毎月8万-9万円かかり、負担は軽いとは言えない。だが、島は土地代も食料品などの物価が安いというメリットもある。私は自宅の畑でスイカやメロン、キュウリ、ナス、トマトなどさまざまな果物や野菜を育てている。育てているつもりでなくても、温暖な環境なので勝手になってしまう作物もある。生活費全体を含めて考えれば、バランスはとれていると思う」

(聞き手は桑原健)

きしだ・とおる
1973年東大院博士課程修了。出版社経営などを経て、91年にセコム入社。在宅学習サービスなどを提供する子会社セコムラインズの社長を務める。98年にネットラーニング設立と同時に現職。語学や情報技術(IT)などeラーニングの幅広い教材を提供する。受講者や導入企業への手厚いサービスで成長し、導入企業は約2000社、延べ受講者は約140万人。eラーニングでは国内最大規模。東京都出身。(写真省略)