NetLearning in News ~掲載記事一覧~

日経産業新聞 2007年(平成19年)1月11日 25面

追跡 強さの源泉
ネットラーニング ラーニングセンター

担任制、修了まで支援

 インターネットで学ぶ「eラーニング」の大手、ネットラーニング(東京・新宿)は約2000社と社員教育の契約を結び、受講者は累計約140万人に達する。受講者それぞれに同社の「ラーニングセンター」の指導員がつき、学習を最後まで支える仕組みが企業の支持を集めている。
「仕事でお忙しいですか。なかなか進んでいないようですが」。ネットラーニングの指導員と受講者が相互の連絡に使うネット上の掲示板。「チュータ」と呼ばれる指導員は受講者が書き込んだ質問に応じつつ、遅れの目立つ受講者には学習を進めるように促す。
指導員にはIT(情報技術)や語学の試験対策など各コースの学習内容に詳しい専門学校の教員らを採用。受講者それぞれに担当指導員を決め、質問への回答や確認テストの添削、学習が遅れている場合の励ましなどをコース修了まで任せる担任制だ。
eラーニングの企業の多くは教材の売り切りが中心。個別の質疑応答や添削を売り物にする企業も出ているが、一人の指導員が最後まで面倒を見る例はあまりない。ネットラーニングの岸田社長は「一貫して担当することで各受講者がつまずいている理由がよく分かり、適切な指導ができる」と担任制のメリットを強調する。
担任制の成果は実際の数字に表れている。同社の場合、受講者が学習コースを最後までやり遂げた割合を示す修了率は90%程度。50%を切るとみられる業界平均を大きく上回っている。
指導員が所属するラーニングセンターは西新宿の本社内にあるが、実は現場で働いているのは各受講者の学習状況の管理などを担当する社員だけだ。指導員の多くは専門学校の教員や企業の技術者といった本業を続け、自宅のパソコンなどで業務をこなしている。
もっとも、指導員の仕事ぶりはセンターの社員がシステム上でこまめに管理。「受講者の質問には24時間以内に回答する」といったルールを守っているかどうかを点検している。
現在100人超の指導員について、岸田社長は「今の受講者の増加ペースが続けば今後4-5年で1000人程度に増やす必要がある」と語る。順調に受講者が増え、指導員も増やす場合、指導員の質も維持できるかどうかが課題になりそうだ。
矢野経済研究所によると、2001年度に260億円だったeラーニングの国内市場規模は06年度に2.5倍の660億円に達するもようだ。企業の業績回復により、人材育成に資金を振り向けるゆとりができたことが急成長の背景にある。
ただ、成長を見込んだ新規参入で約2000社が乱立する状況。岸田社長は「淘汰が進むのは確実」とみており、担任制の指導などで学習を最後まで支える事業モデルに生き残りの道を求める。
ネットラーニングは3-4講座を同時に受講しようとする人に対し、ラーニングセンターなどを通じて「続ける時間が確保できるかどうかを考えてほしい」と再考を求めるケースもある。目の前の売り上げにとらわれず「受講者が学習内容を理解するまでがサービス」(岸田社長)という戦略を貫くという。

(~受講者の学習状況と指導員の業務を管理するラーニングセンター(東京・新宿) 写真省略~)