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日経流通新聞 2008年(平成20年)8月25日 7面

女性従業員 フル活用
育児休業中のスキル獲得支援

 東急ストアが女性従業員の積極活用に乗り出した。パートが現状のシフトを維持したままで正社員になれる制度を今春から導入したほか、育児休業をとった女性従業員の職場復帰を支援する制度を拡充。全国規模で見ればパートなど非正社員の雇用には頭打ち感もあるが、首都圏のスーパーは依然として人手不足に悩む。制度の利用者からは歓迎する声が大半で、人材つなぎ留め策として成果が期待できそうだ。
 東急ストアが今春に導入したパートからの正社員登用製度。一期生の41人が6月から正社員として新しい第一歩を踏み出した。

 あきる野とうきゅう(東京都あきる野市)で、顧客対応業務に携わる鴇田慶子さんは別の店で4年間パートとして働いたが、「仕事上の決定権が欲しい」として新制度での登用試験に名乗りをあげた。正社員になった今、「社内会議で発言を求められるなど仕事の重みが増した」と気を引き締める。
 給与はフルタイムで働いた場合、年収で平均100万円以上上がる。新制度のもとでは、パート時代のシフトを維持するなど勤務時間を選べる仕組みだが「実際にはフルタイム勤務を選ぶ人が大半」(東急ストア)だ。鴇田さんのような人材を掘り起こす策として成果を上げ始めている。
 育児休業中の女性が家庭でパソコンに向かって表計算ソフトの使い方を勉強する――。職場復帰支援として導入したのは、インターネットを使った育児休業者向けサービス「wiwiw(ウィウィ)」。同サービスはもともと資生堂が開発。現在はインターネットを使った遠隔教育を手掛けるネットラーニング(東京・新宿)が子会社を通じて運営している。
 東急ストアでは、ワープロや表計算ソフトの使い方など「ビジネススキルアップ」と、日常生活で役立つ収納や料理法などが学べる「ライフスタイルアップ」を合わせて60前後の講座が利用できるようにした。ネット上の掲示板を使った情報交換や24時間の電話相談サービスもある。
 費用は会社が全額支払う。初期登録費用や会社の規模に応じて払う運用費などを除いて、一ヵ月一人当たり6300円を負担する。

 齋藤香絵人事マネジャーは、今年5月まで育休を取得し同サービスを活用した一人。「パソコン技術の向上に役立ったほか、掲示板での情報交換で勇気づけられた」と振り返る。育休中には「仕事復帰と子育てへの不安が付きまとう」。多くの女性が同じような悩みを抱えているとみられ、こうした不安を解消するツールへの需要は「想像以上に高かった」(東急ストア)。
 利用者には期間中に60のうちの10講座を修了し積極的に活用した人もいる。ただ、現時点での利用率は育休取得者の約4割にとどまっており、すそ野を広げるのが課題だ。今後「セミナーなどでの告知を強化し利用者を増やす」(小野道久取締役)。
 東急ストアが女性に焦点を当てた人材活用策を相次いで拡充したのは、店舗の現場運営の核である女性従業員が不足しかねないと言う危機感があるためだ。これまでレジ係や生鮮加工などの分野で、女性従業員の比率は高かったものの「女性が働きやすい環境づくりへ向けた支援はおざなりにしてきた」(小野取締役)。
 同社のパート・アルバイト従業員は約9千人。そのうち年間で約3割の2500人が入れ替わるという。「再雇用や一からの育成を考えるとコスト面でも有利」(同)。他スーパーも人材つなぎ留めに苦心するなか、東急ストアの策は注目を集めそうだ。

(~育児休業中の従業員はインターネットを使った遠隔教育を受けられる~ 写真省略)