NetLearning in News ~掲載記事一覧~

日経産業新聞  2001年(平成13年)6月14日 13面

キャリアビジネスに挑む -ネットラーニング-

ネット上に研修コース
勤務中に職場で受講可能


ネットラーニング(東京・新宿、岸田徹社長)は情報技術(IT)の修得や管理者教育などをインターネット上で実施するeラーニング型の研修を提供している。企業では事業の再編や人員の大規模な再配置、人事などの制度変更などが相次いでおり、短期間で効率的な教育や研修を実施する必要が高まっている。受講者が職場で勤務時間中にそれぞれの事情に合わせて学習できる点が売り物だ。

研修費用4分の1

三洋電機は昨年、管理職を対象とした人事評価者研修にeラーニングを採用した。受講者はパソコンから専用サーバーに接続し、ネット閲覧ソフトに研修用プログラムを読む込む。四月には従業員研修もeラーニングに移行。表計算ソフトなど幅広い職種を対象としたものから、技術者のためのプログラム言語修得、ネットワーク構築などの研修も充実させる。

研修プログラムを設計し、インターネット経由で専用サーバーから顧客企業に提供するのがネットラーニングだ。評価者研修用のプログラムは、ネットラーニングのコンサルタントが三洋電機の人事制度とその運用理念を踏まえてカスタムコースとして設計した。従業員向け研修ではネットラーニングのオリジナルコースが主に利用される。

三洋電機の管理職は約四千人、グループを含む従業員は三万四千人。多数の受講者を一ヶ所に集めて講師や会場を確保するのと比べると「費用は四分の一ですむ」とネットラーニングの岸田社長は説明する。オリジナルコースの場合、IT関連の研修プログラム(十五-三十時間)で一人三万八千円の標準価格設定だ。

修了率は9割に

ネットラーニングの研修コースは修了率が約九割と高い。そのカギのひとつが受講者に一人ずつ割り当てるチュータと呼ばれる研修担当者。記述式問題を添削指導するほか、受講者が自分専用の「掲示板」に質問を書き込むと二十四時間以内に返事し、学習支援する。オリジナルコースでは専門知識をもつ在宅勤務者などが、一人で約五十人を指導する。

研修プログラムは二十分程度で一区切りできるように構成し、受講者は仕事の繁簡を見ながら研修できる。パソコンとモデムがあれば出張先でもネット経由で受講可能。受講者の七五%が勤務時間内の研修に取り組んでいる。「サロン」というネット会議室では受講者と研修担当者の対話を全員が閲覧可能で知識を共有できる。

キヤノンの人材開発センターの萩原博副所長は「研修担当者や上司は研修の進み具合をネット上で逐次把握でき、標準的な進行スケジュールとの比較ができる」とメリットを語る。ネットラーニングでは、受講者の意見や試験結果の分析などを基に、研修プログラム内容の改善も可能だ。

企業内での人員の再配置や企業間の人材移動が活発化すると「個人がキャリアとして身につけるべき能力や知識への要求も高まる」と岸田社長は語る。同時に「企業の研修システムの優劣は、人材が転職を検討する際の重要なカギを握るようになる。(同)とも指摘する。

米国ではeラーニングの活用が一九九九年春ごろから急速に拡大した。米調査機関のIDCは米eラーニング市場は二〇〇三年に百十四億ドル、二〇〇四年に二百三十億ドルと予測する。岸田社長は「日本も二年遅れで成長の兆しが出てきた」と語る。同社のサービス受講者数は昨年の約二万人が今年は十倍に増える勢い。売上高は九億円と昨年の約七倍に達する見込みだ。

IT技術者育成に力

当面は質でも数でも米国に大きく見劣りするIT技術者を養成する研修コースの充実に力を入れる。技術変化が激しいため職場内訓練(OJT)になじみにくいうえ、集団研修では社員全体の知識習得が間に合わないからだ。更に新人や管理職など階層別の実務研修や、語学や金融知識の研修などに対象を広げる。