リスキリング革命とその先にある未来へ繋げるために

公開日:2023/2/27(月)

筆者:岸田努(株式会社ネットラーニング 代表取締役社長)

リスキリングと第4次産業革命

2020年、世界経済フォーラムにて第4次産業革命(IoT、AI、ビッグデータを用いた技術革新)によって、さまざまな新しい仕事が生まれると同時に7,500万人の雇用が技術革新により奪われる可能性があると発表されました。

こうした変化に対応するために、Reskilling Revolution Platformというプロジェクトを開始し、2030年までに全世界で10億人をリスキリングするという宣言が行われました。主にデジタルスキルを中心としたリスキルとアップスキルがテーマとなっています。

そうした中、日本でも2022年10月に岸田首相が、今後5年間で1兆円をリスキリングの支援に投じる方針を打ち出しています。

攻めと守りのリスキリング

リスキリングとは何か?という説明はすでに多くの場でされており一般的な理解は深まっていると思うのでここでは詳しい説明は割愛しますが、企業が取り組むリスキリングは目的により2つに分けられると一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブの代表理事を務める後藤宗明氏は説明しています。

攻めのリスキリングはDX推進、従業員のデジタルスキルを向上させ生産性をアップすることを目的としています。
一方で守りのリスキリングはシニアの活用、従業員の再戦力化などを目的としています。

攻めのリスキリング
  • 企業のDXをサポートするデジタル人材育成
  • 従業員のデジタルリテラシー向上
  • 生産性アップ
守りのリスキリング
  • シニアの雇用維持のためのスキル再習得支援
  • 従業員の再戦力化、アップスキル

攻めと守り、それぞれの目的に適したリスキング研修の実施や制度の構築が必要となり、しっかりと分けて考えることが重要だと思われます。

リスキリングの進め方と課題

引用:リスキリングする組織——デジタル社会を生き抜く企業と個人をつくる - リクルートワークス研究所新しいウィンドウで開く

上記を踏まえ、企業は目的に沿ったリスキリングの進め方をどう選択し実行していくのかが重要になります。リスキリングを推進するにあたり、その進め方と現状の企業が直面しやすい課題などが非常によくまとまったレポート新しいウィンドウで開くをリクルートワークス研究所が出しているので紹介します。こちらのレポートでは企業が従業員のリスキリングをどのように進めるのか、その具体的な手法を4つのステップと8つのキーファクターにわかりやすくまとめています。

本レポートのリスキリングの具体的な4つのステップを要約して以下に紹介します。

Step1 スキルを可視化する
新しい業務で必要となるスキルを特定する、現在の保有スキルを明確化する
Step2 学習プログラムをそろえる
外部のコンテンツ提供者とうまく連携し、いいプログラムを揃える
Step3 学習者に伴走する
使い勝手のいいLMSを選出し、個人の学習を促進する
Step4 スキルを実践させる
実際に職場で実践してもらうというプロセスを欠かさない

なお、Step3の学習者に伴走する章(レポートPage13)では、当社が提供するデジタル認定証のオープンバッジについても触れられています。
オープンバッジのコレクションはそのまま個人が保有するスキルの可視化となり、個人の学習のインセンティブになること、また学習歴や学習による獲得スキルの可視化から社内における適材の探索にも有用であるとされています。

"学ばない日本人"は嘘。これからは…

なお、海外と比較すると日本の従業員は学ぶ習慣がないとよく言われますが、それは嘘だと思っています。従業員に学ぶ習慣がないのではなく、日本企業でこれまで広く採用されてきた雇用形態のメンバーシップ型による起因が大きいです。

メンバーシップ型では、従業員は総合職として採用され業務内容や勤務地、部署などが限定されないことからコミュニケーションスキルや協調性、論理的思考力、創造性といったソフトスキルが、仕事に必要な専門性の高いハードスキルより重視され、スペシャリストよりもジェネラリストが高く評価されてきました。そのため、従業員の多くはハードスキルを習得するよりソフトスキルに比重を置きがちだったのではないかと思います。

もともと日本人は勤勉であり、また評価に対して敏感であると思っています。そのため、日本でも雇用形態がジョブ型にシフトし、業務内容が明確に決まり、仕事の専門性が高まり業務範囲が限定的になれば、それに応じて各自が積極的かつ自律的に学び、スキルアップをはかるとわたしは思います。

ラーニングテクノロジーの活用(オンライン企業内大学とオープンバッジ)

リスキリングを効果的に進めるためにはラーニングテクノロジーを有効活用することが重要です。
効果を最大限に高めるために活用できるラーニングテクノロジーとして以下の2つがあります。

  • オンライン企業内大学
  • オープンバッジ

オンライン企業内大学は、近年の研修のオンライン化とLMSの採用により、これまで限定的であった研修提供が全社員に展開することが可能となりました。またその役割も最近では大きく変化し多様な企業内大学の開学が進んでいます。
詳しくはこちらのBlog「オンラインで復活した企業内大学とリスキリングへの活用」に書いていますのでぜひご覧ください。

またオープンバッジは国際技術標準規格新しいウィンドウで開くにそって発行しているデジタル証明/認証で、スキルの可視化を実現します。オープンバッジを公開したり、SNSなどで共有したり、オープンバッジの内容証明を行うことができます。そしてブロックチェーン型のオープンバッジは、偽造・改ざんが困難であるため、信頼のおける学習・資格証明書として研修教育分野に新たな価値をもたらしています。

こちらでは参考までにわたしが保有しているオープンバッジをお見せします。バッジを獲得することはわたし自身が保有するスキルの可視化にもなります。このように従業員がオープンバッジを獲得し、自身が保有するスキルをアピールすることは、学習を進める大きなインセンティブにもなります。

各バッジの詳細についてはこちら新しいウィンドウで開くからもご覧いただけます。

より詳しいオープンバッジサービスについては当社のホームページをご覧ください。

未来に向けて

世界経済フォーラムにて発表された第4次産業革命によるインパクトは非常に衝撃的な内容でした。ますますデジタル化と自動化が進む中、人材には広範囲でスキルアップを行う必要があり、2030年までに10億人に対してリスキルを提供することを宣言しました。そしてこれを実現するため、「リスキル革命プラットフォーム」を構築するとしています。

多くの国や企業が参画し、まさにリスキリングは産業変化を推進し実現する人材を育成する世界規模の取り組みです。当社も例外なくその一部として、大きな時代の変化に対し、革命を起こし、各自が新しい未来に胸を踊らせて日々学ぶことを楽しめるよう環境を提供していくことができたらよいなと思っています。

筆者プロフィール

岸田 努

株式会社ネットラーニング 代表取締役社長

外資系情報サービス業で大手企業中心に情報システムを導入。2003年ネットラーニングへ入社。eラーニング導入初期の2000年代においてeラーニング市場作りと開拓を行い、大手企業を中心にコンサルティングに携わり数々の研修を成功に導いた。2021年に代表取締役社長就任。外部団体への参画も精力的に行い、一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会、特定非営利活動法人デジタルラーニング・コンソーシアム、一般財団法人オープンバッジネットワークの理事も務める。

   

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