GIGAスクール構想のいまと「令和の学びのスタンダード」

公開日:2023/5/25(木)

筆者:岸田努(株式会社ネットラーニング 代表取締役社長)

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GIGAスクール構想

2019年(令和元年)12月19日、1人1台コンピュータ、高速通信ネットワーク回線、データやアプリをクラウドで管理することをデフォルトとした、「GIGAスクール構想」が閣議決定されました。

そして、2023年度までに義務教育段階において、全学年の児童生徒一人ひとりがそれぞれ端末をもち、十分に活用できる環境を実現するために、文部科学大臣を本部長とする「GIGAスクール実現推進本部」が設置されました。

その後、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言により、GIGAスクール構想で示された学習環境の整備は加速し、学びを止めないためのオンライン授業の実践が各地で見られるようになりました。
現在では、オンラインとリアルな授業を同時に行うハイフレックス型の授業など、各学校や自治体では、創意工夫に基づく取り組みが行われています。

教育総合展「EDIX東京」

EDIX東京

そうした中で、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類感染症になり、さまざまな制限が緩和された状況において、東京ビッグサイトで実施された教育総合展「EDIX東京」(2023年5月10日~12日)では、GIGAスクール構想を踏まえた多くの企業各社の展示や、有識者による講演が行われました。

EDIXは本年で14年目を迎え、初回当時は電子黒板などの展示が多くありましたが、近年ではオンライン授業、AIやVRを活用するものなど、教育に大きな変革が起き、展示会の内容も変化してきました。

当社は、LTIやオープンバッジ(教育分野のデジタル証明書)といった国際標準規格に準拠した新しい技術をベースとしたソリューション提供など、ニューノーマルな学校社会の実現に向けて豊富なノウハウと多様なサービスを学校・学習塾・教育機関の皆さまへご紹介しました。
特に2022年12月に、子どもたちのいまと未来をつなげる学習eポータル「みらeポータル」をラインナップに加えご紹介し、多くのお客様に関心を寄せていただきました。

みらeポータル

教育ICTの動向と課題

中央教育審議会委員として、GIGAスクール構想をはじめ、多くの国の教育施策に関わっている東北大学大学院/東京学芸大学大学院の堀田龍也教授は、EDIX東京2023にて「教育ICTの動向と課題」と題したご講演をされました。
その中で、コロナ禍前とコロナ禍後との社会の変化を例に挙げ、学校教育がコロナ禍前と変わらなくていいと思っている自治体と、ICTを積極的に使っている自治体とでは、相当な教育格差が生じていることを指摘していらっしゃいました。

かつて、アメリカの教育哲学者ジョン・デューイは、“If we teach today’s students as we taught yesterday’s, we rob them of tomorrow.”(今日の生徒に昨日と同じように教えれば、彼らの明日を奪うことになる)と述べています。

ChatGPTなどの生成系AIが驚異的なスピードで技術革新を遂げていく中で、生成系AIを必要に応じて使いこなすことや、生成系AIによって生み出される真実のような偽りを見抜いていく力を養うためには、テクノロジーを敬遠するのではなく、適切に使用し学ぶことが重要です。

堀田龍也教授は、生成系AIについて科学的に理解するとともに、教える側が果たして今までの教育課程で良いのか議論することが必要であると課題提起をされていました。

GIGAスクール構想が目指しているのは、「Society5.0」の実現のために、学びに向かう力を育成することにあります。
そのためには、児童生徒は学びを与えられるだけではなく、個別最適な学びや探究的な学びを深めていくため、テクノロジーを適切かつ効果的に使用することが求められます。そしてこれらは、子どもたちの未来へとつながっていくことになります。

学び・研修プラットフォーマーの役割

学校教育におけるGIGAスクール構想の実現や大学教育のオンライン授業、学習塾における学習の個別最適化など、学校・学習塾・教育機関における学習環境は、いま大きな変革の時期を迎えています。
GIGAスクールが目指すのは、1人1台端末、高速ネットワーク回線、クラウドの活用であり、学習者が主体的・対話的で深い学びの実現を具体化するための学びの再設計にあるとネットラーニングでは考えています。

初中等教育においては、学校現場で教職員の皆さまが児童・生徒へ向けて「主体的・対話的で深い学びの実現」をどのようにして授業で実践できるかがカギであると考えています。
高等教育機関においては、これからの時代を担う学生のキャリア形成を高いレベルで支援するため、オンライン授業の導入や学生の授業登録や授業成績を安定的に管理できる学習支援システムの構築が求められています。

そうした中、当社ではIMS国際標準規格であるオープンバッジの提供により、学位プログラムやリカレント分野において、信頼度の高い新たな学位・単位証明のスタイルを実現します。
自身が取得したオープンバッジは、世界中のどの発行者が出したものでも、自分専用のウォレットにまとめて保管、管理し、就職や転職時等に、自分の強みを可視化して見せることができます。自分の目指すキャリアに向けて、どの資格を取得していけばいいのか、目標とする人のオープンバッジをみて、学びのプランを立てることも可能です。

教育が常に時代にあわせた新しい学び方で実現できるよう、ネットラーニングは、Caliper / LTI / OpenBadge などIMS規格に完全準拠したLMS「Multiverse®(マルチバース)」を通して支援してまいります。

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筆者プロフィール

岸田 努

株式会社ネットラーニング 代表取締役社長

外資系情報サービス業で大手企業中心に情報システムを導入。2003年ネットラーニングへ入社。eラーニング導入初期の2000年代においてeラーニング市場作りと開拓を行い、大手企業を中心にコンサルティングに携わり数々の研修を成功に導いた。2021年に代表取締役社長就任。外部団体への参画も精力的に行い、一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会、特定非営利活動法人デジタルラーニング・コンソーシアム、一般財団法人オープンバッジネットワークの理事も務める。

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