世界に学ぶオープンバッジの活用事例

公開日:2023/10/2(月)

筆者:岸田努(株式会社ネットラーニング 代表取締役社長)

オープンバッジとは何か?

オープンバッジは国際技術標準規格新しいウィンドウで開くに則って発行されるデジタル証明/認証で、スキルの可視化を実現します。取得したオープンバッジは、画像としてインターネット上で公開できます。 メールへの署名添付、SNSでの共有などが可能です。オープンバッジを公開すると同時に、内容証明が可能となり、また取得者が身につけたスキルや知識を他者と共有し証明することができます。
そしてブロックチェーン型のオープンバッジは、偽造・改ざんが困難なため、信頼のおける学習・資格証明です。企業は採用やスキルマップ、スキルマッチングでオープンバッジを活用することができます。 オープンバッジは、個人が身につけたスキルや知識へ新たな価値をもたらすのです。

世界で活用されるさまざまなオープンバッジ

オープンバッジはこれまでに、世界各国で多くの団体から発行されています。 発行サービス提供組織からの報告をまとめると、2022年現在約7,500万個の発行が確認されましたが、未報告分も含めると1億個を超えると推測できます。 発行者は26,285 法人・団体あり、そのうち 14,921法人・団体は米国に拠点を置いています。

引用:https://content.1edtech.org/badge-count-2022/findings新しいウィンドウで開く

米国

オープンバッジ発行者の半数以上が米国に拠点を置いており、さまざまな目的で利用されています。 企業内研修や企業内大学での活用、そしてアメリカ航空宇宙局(NASA)、大学、信頼・安全性を検証する消費者サービスなどで活用されています。 主に人材育成の分野におけるスキル証明に活用が広がっています。
下記のオープンバッジはそれぞれクリックすると各バッジの詳細を確認することができます。


ヨーロッパ

欧州委員会は、組織がEU全体でデジタル認証情報を発行するために使用できる技術インフラストラクチャの開発に取り組んでいます。 この技術インフラストラクチャは、EU加盟国およびさまざまな関係者によってオープンバッジが使用されることを目的とし、学生の卒業証書や就労を目的としてオープンバッジを取得・保有させスキルの証明を行います。
このインフラストラクチャでは「ユーロパス(Europass新しいウィンドウで開く、欧州共通の履歴書)」を提供しており、ヨーロッパで就労を目指す人にこの登録を促し、人材を採用する企業側に対しては、 Common European Framework(欧州共通フレームワーク)を採用の基準として活用するよう促しています。
こうしたユーロパスとデジタル認証情報の活用から、EU加盟国からの証明書が他の加盟国でも利用および検証できるようになり、学習者や企業、その他組織における雇用にかかるさまざまな負担を軽減します。 さらに学習成果、スキルの証明の認定を行う仕組みとして、オープンバッジの活用が並行して進んでいます。

韓国

学歴を重視する傾向が強い韓国においては、数年で150の大学にオープンバッジの導入が進みました。また63の専門大学が参加する韓国高等職業教育学会メタバーシティ(Metaversity)プラットフォームでも活用されています。 こうして「オープンバッジ」への関心が高まった韓国では、大学のみならず企業、自治体などでデジタルバッジの導入および活用の事例が増加し、さまざまな組織に広がっています。
大学においては、成均館大・漢陽女子大・東江大などで活用が始まりました。成均館大では学生成績能力強化のための比較とプログラム(16センター)で年間1万個以上のオープンバッジを発行しています。 また、漢陽女子大と東江大は最近、韓国で初めてオープンバッジでデジタル卒業証書を授与しました。今後は単位履修などに拡大する計画です。

インドネシア

国立インドネシア大学でオープンバッジの導入が決定し、今後、大学の卒業証書をはじめとする様々な分野に拡大することを期待していると述べています。
アジアの人口ランキングで3位となるインドネシアでのオープンバッジの利活用は、今後急速に広がるでしょう。

オープンバッジを分類するマトリックス

さまざまなオープンバッジが発行される中で、それらを分類するために米国の継続教育・研修の国際認定機関のIACETが分類法を作成しました。こちらがそのマトリックスです。
企業においては学習におけるレベル/プログラムバッジの発行が進んでおり、協会などが実施する検定試験などにおいては検証能力の証明書/ライセンスバッジなどに分類される バッジの発行が進んでいます。

引用:IACET Badging Taxonomy新しいウィンドウで開く(日本語に翻訳)

日本でも活用が進むオープンバッジ

現在日本でも大学、企業、その他団体でオープンバッジの活用が進んでいます。それぞれ導入事例を詳しく説明した紹介ページがありますのでぜひご覧ください。

富士通の事例

情報処理学会の事例

まとめ

「学歴」から「学習歴」が重視される時代に変化し、雇用形態がメンバーシップ型からジョブ型に大きく変わっていく中で、「学習歴」をわかりやすく明示・可視化する必要性が生まれました。
LinkedInの報告書『The future of Recruiting 2023新しいウィンドウで開く』によると 2019 年以降、採用担当者がスキルベースで候補者を検索した割合は25%増加し、またイギリスでは2021年から2022年の間に「学位不問」の求人広告が90%増加したとのこと。
現在、IBM、アクセンチュア、テスラ、グーグルなどの企業では学位ではなく、スキルに基づく採用を増やしており、スキル優先の採用が今後より一般的になっていくことが予想されます。
そうした中、スキルを可視化したオープンバッジは画像ファイルのため非常に扱いやすく、また誰もが自身の強みをアピールでき、LinkedInなどのSNSで簡単に共有できるようになりました。 そして共有されたバッジの波及効果は高く、多くの人の目に止まり、またスキル獲得に向けた学びへの動機づけを促します。
オープンバッジは、学歴のみならず、学習歴やスキルを可視化することができ、大学におけるマイクロクレデンシャルや、企業の社員のリスキリング・学び直し、 そしてDXを推進するデジタル人材育成など、さまざまな場面で活用が可能な革新的ソリューションです。 日本においても、ジョブ型へのシフトが進む中、今後さまざまな新しい職種やスキル、キャリアパスが登場していくことが予想されます。 そうした中で、個人のスキルを「可視化」することの重要性は、今後さらに増していくことでしょう。

最後に参考までに私が保有するオープンバッジをご案内します。

著者保有オープンバッジ公開ページ新しいウィンドウで開く
学歴ではなく学習歴が重要視される時代、各自が保有するスキルの証明をこのように簡単に共有、公開することができます。

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筆者プロフィール

岸田 努

株式会社ネットラーニング 代表取締役社長

外資系情報サービス企業で大手企業中心に情報システムを導入。2003年ネットラーニング入社。eラーニング市場作りと開拓を行い大手企業中心に販売。数々の研修を成功に導いた。2021年、代表取締役社長に就任。一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会、NPO法人デジタルラーニングコンソーシアムの理事。

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